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未経験者からライセンス保持者まで エアラインパイロットへの「4つの道」 - 航空業界専門の求人サイト「航空人WEB」

未経験者からライセンス保持者まで エアラインパイロットへの「4つの道」

 

増え続ける航空需要、世界的なパイロット不足が後押しして、近年はパイロットの採用活動が活発だ。以前に比べると航空身体検査基準が緩和されたこともあり、エアラインパイロットの採用試験を受験できる人は確実に増えている。 では、エアラインパイロットになるためにはどのようなルートがあるのか。学歴や応募資格の基準はどうなっているのか。ここではエアラインパイロットになるための基本的な概要と多様化してきたパイロットになるためのルートを一つずつ紹介していこう。

 

※年刊ムック「ザ・パイロット 2019」(2018年11月29日発売)より転載

エアラインパイロットのなり方

パイロット不足がたびたびメディアで報じられているように、近年はLCCの設立が相次ぐなど航空需要は右肩上がりで伸びてきた。

 

さらに、機材の小型化による増便も進められており、中堅エアラインやLCCでは特にパイロットの確保が大命題になっている。しかし、日本ではパイロットという職業はあまり認知されておらず、どのようにすればパイロットとしてエアラインで働けるようになるのか分からないという人も少なくない。  

 

日本のエアラインでパイロットとして活躍するためには、航空機の操縦ライセンス(技能証明と言う)を取得することが大前提だが、エアラインのパイロットとして航空機を操縦するためには次のような複数のライセンスが必要になる。

 

①事業用操縦士技能証明

②多発限定

③計器飛行証明

④エアラインで乗務する機種の型式限定  

 

さらにこれらの航空機の操縦に係わる国土交通省航空局(JCAB)の資格に加えて次の資格も必要になる。

 

⑤第一種航空身体検査証明

⑥航空英語能力証明

⑦航空無線通信士  

 

まず①の資格は自動車の第二種免許に相当するプロ用の資格で、1人で操縦できる航空機に機長として乗務することができる。②の多発限定とはエンジンが2発以上の航空機を操縦できることを示している。  

 

③は有視界飛行ではなく、旅客機の飛行の基本となる計器飛行をするための資格。計器飛行とは計器のみを頼りに飛行する方式で、視界が悪い天候下でも運航しなければならないエアラインパイロットには必携となっている。

 

さらにエアラインが運航している旅客機は機種ごとに資格が必要で、ボーイング737ならボーイング737の、エアバスA320ならエアバスA320の型式限定を取得しなければ乗務できない。この資格はエアラインに入社してから乗務する機種の型式限定を取得するので、エアラインの入社前には考えなくてよい。  

 

⑤は1年間有効(60歳以上は半年間有効)の国土交通大臣または指定航空身体検査医による身体検査の資格で、第一種とはエアラインパイロットなどのプロ用の資格で、アマチュア用の第二種よりも基準が厳しくなっている。操縦のライセンスを持っていても、この航空身体検検査に不合格となれば航空機を飛ばすことはできない。  

 

⑥の航空英語能力証明はレベル1からレベル6まである。国際線の運航も行っているエアラインではレベル4以上を取得することが求められており、レベル4の有効期間は3年間。

 

⑦の総務省所管の航空無線通信士は無線を通して航空管制官と交信するために必要な資格。アマチュアパイロットは航空特殊無線技士の資格でも飛行できるが、プロパイロットは上位資格の航空無線通信士の資格が必携となっている。 では、ここからはエアラインパイロットになる4つのコースを紹介する。気になるところから読んでほしい。

 

1.自社養成パイロット


2.航空大学校を卒業してエアラインに就職する

 

3.私立大学でライセンスを取得してエアラインの採用試験にトライ


4.民間の飛行学校でライセンスを取得しエアラインパイロットをめざす

自社養成パイロット

ライセンスを持っていない一般学生が応募できるのはANA、JAL、スカイマークなどが実施している自社養成パイロットの採用試験だ。この試験は、大卒者や大学院の修了者を対象(現在は卒業・修了してから3年間は新卒扱いになっている)にした就職試験の一つで、入社してから業務としてライセンスを取得する。

 

ライセンス取得のための訓練費の自己負担がないことから、毎年多くの人が採用試験にチャレンジするので超難関の試験である。  

 

自社養成パイロットの採用試験は、地上職と同等の筆記試験や面接に加え、航空身体検査、航空適性検査などが実施され、人物面とともにパイロットになれる心身や適性があるかどうかが確認される。  

 

ANAとJAL、スカイマークの3社では5次試験まで実施しており、面接試験やグループワーク、グループディスカッションなど一般の就職試験で実施されている試験に加え、航空身体検査と航空(操縦)適性検査を実施している。

 

この二つの検査は自社養成パイロットの採用試験ならではのもので、最も厳しい試験になる。身体検査は一般の健康診断とは異なり、プロのパイロットとして飛ぶために必要となる第一種航空身体検査の基準よりもさらに厳しい検査が実施されているが、視力に関しては基準が緩和されて眼鏡を掛けていても問題ない(ただしレンズの屈折度の基準はある)。

 

検査は全身くまなく検査されて、基準に達していない項目が一つでもあると合格できないのでハードルは高い。また、自社養成パイロットの試験は、パイロットとしての適性をみることに加え、エアラインの社員の採用試験という要素があることから、面接をとても重視している。ここではパイロットになりたいという強い意志とともに、社会人、企業人としてバランス感覚に長けてコミュニケーション能力と協調性があるかどうかなどがみられる。  

 

自社養成パイロットの採用試験では、英語の試験も重要視されているのも特徴だ。飛行訓練の中心は海外で、外国人教官による英語で訓練が実施されることから、英語でのコミュニケーション能力は必須となる。

 

2018年度には日本のLCCとして初めてPeachが訓練費負担のパイロットチャレンジ制度の採用試験を実施したが、これも一種の自社養成制度と言える。パイロット不足が深刻な時代なので、今後も自社養成制度の採用を開始するエアラインが出てくる可能性は十分ある。  

航空大学校を卒業してエアラインに就職する

独立行政法人航空大学校への就学期間は2年間で、卒業までにエアラインにパイロット要員として就職できるライセンスを取得する。2019年度からはパイロット不足に対応するため、1学年の定員は72名から108名に増員した。  

 

入学資格は大学2年修了(短大、高等専門学校、卒業時に専門士か高度専門士の学位が与えられる専門学校卒業でも可)で受験資格ができる独立行政法人航空大学校に入学する方法だ。学歴条件を満たした人で、2019年度入学の場合であれば1994年4月2日から1999年4月1日までの生まれで、過去に2次試験(身体検査A)で不合格になった人(一部の例外者は除く)以外なら何回でも受験チャンスがある。  

 

入学試験は第一次試験から第三次試験までで、第一次で総合I(筆記)、英語(筆記、リスニング)、総合II(筆記)、第二次で身体検査A、身体検査B、第三次で面接試験、操縦適性検査が実施される。受験者は大学の新卒者と既卒者が多く、大学の上位校出身者が多い。入学金は28万2000円、授業料も2年間で320万8000円(2019年度)と民間のパイロット養成訓練校に比べて格段に安くなっている。

 

このため、エアラインパイロットをめざすという明確な目標を持った人が毎年大勢受験にトライすることから、定員が増えたとはいえ合格率は7~10倍程度という難関校でもある。特に近年は身体検査基準が緩和されたことで応募者が増えており、もともと高かった難易度はさらに高くなっている。  

 

入学後はまず宮崎本校で5か月間の座学を行い、それを終えると帯広分校に移動して単発機シーラスSR22による実機訓練を半年間行う。その後再び宮崎に場所を移して半年間飛行経験を積み、最後は仙台分校で双発機ビーチクラフトG58バロンを使った訓練を7か月実施、訓練の最後には採用を予定しているエアラインを受験して、合格すればパイロット訓練生としてエアラインに入社する。訓練の各ステップで審査があり、同じ審査で2回不合格となると退学になるという厳しさもあるので、心して臨もう。  

 

卒業時にはJCABの事業用操縦士と多発限定、計器飛行証明のライセンスを取得できるため(航空無線通信士は自力で取得)、エアラインに入社後は地上研修の後、実用機の訓練開始から7~8か月程度で副操縦士としてチェックアウトできる。  

 

航空大学校を卒業したからといって、必ず全員がエアラインに就職してパイロットとして活躍できるという保証はないが、近年は毎年100%近くの卒業生がエアラインに入社している。

私立大学でライセンスを取得してエアラインの採用試験にトライ

今、注目されているエアラインパイロットへのコースが、大学在学中に航空大学校出身者と同等のライセンスが取得できる私立大学のパイロット養成コースだ。まず2006年に東海大学工学部航空宇宙学科に航空操縦学専攻が誕生して新しい道筋を作りあげた。東海大学の学生は、2年次から3年次にかけてアメリカのノースダコタ大学に留学し、操縦訓練を受けてJCABの事業用操縦士と計器飛行証明を取得して帰国、エアラインのパイロット採用試験を受験することになっている。

 

つまり、大学4年間で工学士の学位と有資格者対象のパイロット募集に応募できるライセンスも取得できるわけだ。東海大学はANAとの産学連携プログラムで、訓練や授業はANAと航空大学校の協力を得て行われるので、エアラインのパイロット訓練のノウハウが活かされている。多くの人がANAをはじめ日本のエアライン各社に入社して、すでに副操縦士として乗務を開始した人も多く、機長も誕生している。

 

さらに2008年4月には桜美林大学ビジネスマネジメント学群アビエーションマネジメント学類にフライト・オペレーションコースが、法政大学理工学部機械工学科に航空操縦学専修が、熊本の崇城(そうじょう)大学工学部宇宙航空システム工学科に航空操縦学専攻が開設されて、大学でのパイロット養成は一気に広がっていった。

 

東海大学と桜美林大学は海外で、法政大学と崇城大学は国内で飛行訓練を実施するという違いはあるが、4大学ともに4年間の大学の履修科目としてパイロットライセンス取得に向けた座学と飛行訓練を行うことに違いはない。すでに4大学ともに卒業生を数多くエアラインに送り出し、確かな実績を積み上げている。さらに大学とエアラインの間で推薦制度を設けるなど、採用活動は一層活発化してきている。

 

この4大学以外にも2014年度からは千葉科学大学危機管理学部航空・輸送安全学科パイロットコースと、鹿児島の第一工業大学工学部航空工学科パイロットコースで、先行する4大学同様に4年間の在籍期間中にJCABの事業用操縦士と多発限定、計器飛行証明が取得できるコースが誕生している。この2大学はアメリカで基礎的な飛行訓練を実施し、日本に帰国してからJCABのライセンスを取得するシラバスになっている。

 

さらに2019年4月には工学院大学が先進工学部機械理工学科に航空理工学専攻を開設、海外や国内の訓練校と提携してエアラインパイロットをめざすコースやヘリパイロットをめざすコースなどの複数のコースを設定することを計画している。

 

パイロットのライセンスが取得できる大学は、最も若い人で22歳でプロのパイロットとしてのスタートラインにつけるという魅力がある。現在高校生でパイロットをめざしている人で、少しでも早くパイロットとして活躍したいと考えている人にとっては、魅力ある進路の選択肢の一つとなるだろう。

 

ネックは4年間で1500万円から3000万円程度かかる高額な学費で、これが入学希望者のハードルを高くしている。しかし、現在各大学の努力とともに、航空機操縦士養成連絡協議会が主体となって、無利子貸与型の奨学金「未来のパイロット」を創設、JALも私立大学パイロット養成コースの学生を対象にパイロット奨学給付金制度「日本の翼育英奨学金」を設立するなど、国や業界をあげて学生の支援を行う体制を築き上げようとしている。  

 

こういった学費負担軽減に向けた努力などもあり、近年は各大学とも受験者が増えてきており、入学試験の合格倍率も高くなってきた。パイロット不足が深刻になりつつある現在、私立大学のパイロット養成コース出身者の採用状況は良好で、ANAに加えてJALも私立大学のパイロット養成コース新卒者の採用を行うようになった。自社養成、航空大学校出身者以外でもANAとJALに就職できる可能性があるところも魅力の一つと言えるだろう。

民間の飛行学校でライセンスを取得しエアラインパイロットをめざす

エアラインパイロットへのルートには、自力で事業用操縦士(陸上多発)と計器飛行証明のライセンスを取得して有資格者対象の採用試験を受験する方法もある。自力でエアラインパイロットに必要となるライセンスを取得するためには、航空機使用事業会社が主体となって運営している民間のパイロット養成校に入って、飛行訓練を受けて学科と技能の国家試験を受験しなければならない。

 

また、自家用までの訓練を訓練費の安いアメリカなどの海外で行ったとしても1500万円以上もの訓練費が必要で、ライセンスを取得できたからといっても必ず就職できるという保証がないなどリスクはある。一方で有資格者対象の採用試験には年齢制限や学歴の条件がないので、ライセンスを取得できれば一度エアラインパイロットを諦めた人でもトライできる。実際に社会人となって訓練費を蓄えてからライセンスを取得し、エアラインパイロットになった人も多くいる。

 

民間の養成訓練校出身者もLCCなどの採用が活発化してきているので、エアラインパイロットの採用試験に挑戦できるチャンスは増えている。現在では、航空会社の推薦制度を設けているフライトスクールもあり、航空会社側との連携を強めている。

 

エアラインに就職してからの訓練は、決められた期間に決められた訓練を終え、各段階で実施される審査に合格することが求められる。その審査も2回不合格となると、パイロットへの道は閉ざされるという厳しいものだ。このため、自力でライセンスを取得するからといって、ずるずると訓練を行っていると採用試験で合格を勝ち取ることは難しい。常に航空大学校や私立大学でライセンスを取得してきた人と同じ土俵で採用試験を受けることを意識して訓練を受けることが大切になる。さらに、協調性や社会性、コミュニケーション能力など、人間性を磨いてく努力を続けていくことも忘れてはならない。

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