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Road to Pilot エアラインパイロットへの「4つの道」 - 航空業界専門の求人サイト「航空人WEB」

Road to Pilot エアラインパイロットへの「4つの道」

 

コロナ禍でも進められているパイロットの採用

 

近年はパイロットの定年退職者が急増する「2030年問題」に向けて、パイロットの養成が活発化してきた。

しかし2020年、世界中で蔓延した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がエアラインの経営を直撃、メディアでは新卒採用の中止などのニュースが報じられ、リーマンショック時の航空不況を思い起こさせる事態となってしまった。

そのような苦境の中でも、養成に時間がかかるパイロットの採用は粛々と進められている。

運航の要となるパイロットが足らなければ、航空需要が戻ったときに大きな痛手となってしまうのは明らかだからだ。

ここではエアラインパイロットになるためのルートを一つずつ紹介していこう。

 

THE PILOT2021(2020年12月14日発売)より転載

エアラインパイロットに必要なライセンス

パイロット不足がたびたびメディアで報じられているように、近年はLCCの設立が相次ぐなど航空需要は右肩上がりで伸びてきた。さらに、機材の小型化による増便も進められており、中堅エアラインやLCCでは特にパイロットの確保が大命題になっている。

それは新型コロナウイルス感染症が世界的に蔓延し、多くの運休が発生した2020年でも極端に変わることはなかった。それだけパイロット不足は深刻ということになる。

 

日本では、どのようにすればパイロットとしてエアライアンで働けるようになるのか分からないという人も多い。つまり、それはパイロットに適した資質を持った人でも、職業の選択としてパイロットを意識したことがない人が大勢いることになる。

医師をめざす人は大学の医学部に進学して国家試験に合格すること、弁護士になりたければ司法試験に合格して司法修習生として研修を受けること同じように、エアラインのパイロットになるためにも決まったルートがある。

 

そのルートを見ていく前に、まずはエアラインパイロットに必要な資格について説明しておこう。

 

日本のエアラインでパイロットとして活躍するためには、航空機の操縦ライセンス(技能証明と言う)を取得することが大前提だが、免許証一つで運転できる自動車の運転免許とは異なり、エアラインのパイロットとして航空機を操縦するためには次のような複数のライセンスが必要になる。

 

①事業用操縦士技能証明

②多発限定

③計器飛行証明

④エアラインで乗務する機種の型式限定  

 

さらにこれらの航空機の操縦に係わる国土交通省航空局(JCAB)の資格に加えて次の資格も必要になる。

 

⑤第一種航空身体検査証明

⑥航空英語能力証明

⑦航空無線通信士  

 

まず①の資格は自動車の第二種免許に相当するプロ用の資格で、1人で操縦できる航空機に機長として乗務することができる。

②の多発限定とはエンジンが2発以上の航空機を操縦できる資格。

③は有視界飛行ではなく、旅客機の飛行の基本となる計器飛行をするための資格。計器飛行とは計器のみを頼りに飛行する方式で、視界が悪い天候下でも運航しなければならないエアラインパイロットには必携となっている。

 

さらにエアラインが運航している旅客機は機種ごとに操縦する資格が必要で、ボーイング737ならボーイング737の、エアバスA320ならエアバスA320の型式限定を取得しなければ乗務できない。

型式限定はエアラインに入社してから取得するので、入社前には考えなくてよい。

 

⑤は1年間有効(60歳以上は半年間有効)の国土交通大臣または指定航空身体検査医による身体検査の資格。

第一種とはエアラインパイロットなどのプロ用の資格で、アマチュア用の第二種よりも基準が厳しくなっている。操縦のライセンスを持っていても、この航空身体検検査に不適合となれば航空機を飛ばすことはできない。

⑥の航空英語能力証明はレベル1からレベル6まであり、国際線の運航も行っているエアラインでは有効期間3年のレベル4以上を取得することが求められている。

⑦の総務省所管の航空無線通信士は、無線を通して航空管制官と交信するために必要な資格。

アマチュアパイロットは航空特殊無線技士の資格でも飛行できるが、プロパイロットは上位資格の航空無線通信士の資格が必携となっている。

 

一般の学生などを対象とした自社養成制度を設けているエアラインは、入社後にこれらの資格を「業務」として取得する訓練を実施するが、それ以外のエアラインパイロットの採用試験は③を除くすべての資格を取得していることが応募条件になっている。

つまり、ライセンスを持っていない人は、必然的に自社養成の採用試験しか受験できないことになる。

 

なお、ANAとJALの自社養成に限っては、①~③のライセンスの代わりに新たに法制化された准定期運送用操縦士(MPL)を入社後に取得する新しい制度を導入している。

 

これらのことを踏まえて、エアラインパイロットになるコースを一つずつ見ていこう。

 

1.エアライン自社養成パイロット

 

2.航空大学校を卒業してエアラインに就職する

 

3.私立大学でライセンスを取得してエアラインの採用試験にトライ

 

4.民間の飛行学校でライセンスを取得しエアラインパイロットをめざす

 

さらに詳しく知りたい方はエアラインパイロットと自衛隊、海上保安庁パイロットのなり方、採用試験、訓練内容などの詳細を解説するとともに、現役パイロット、採用担当者へのインタビューを通じて、求められている人物像、資質、資格、学歴、仕事の魅力などを探っている雑誌「THE PILOT (ザ・パイロット) 2021」をチェック。

 

thepilot2021

 

THE PILOT (ザ・パイロット) 2021

発売日:2020年12月14日

サイズ:A4変型判

ページ数:148ページ

定価:1,900円(税込)

 

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一般の大学生(未経験者)などを対象にしたエアライン自社養成パイロットを受験

【長所】就職後に会社負担でライセンスを取得

【短所】採用試験は極めて高い倍率

 

ライセンスを持っていない一般学生が応募できるのは一部のエアラインが実施している自社養成パイロットの採用試験しかない。

この試験は、大卒者や大学院の修了者などを対象(卒業・修了してから3年以内の人に絞っている会社が多い)にした就職試験の一つで、入社してから業務としてライセンスを取得する。

2020年度入社では、ANA、JAL、スカイマーク、ANAウイングスが実施した。また、Peachが実施した訓練費一部自己負担の「パイロットチャレンジ制度 With AIRBUS」も一種の自社養成制度と言える。

 

自社養成パイロットの採用試験は、総合職の採用試験でも実施されているエントリー審査や面接に加え、航空身体検査、航空適性検査などが実施され、人物面とともにパイロットになれる心身や適性があるかどうかが確認される。つまり、エアラインの総合職として入社できるような人の中から、パイロットになれる人を探し出す就職試験とも言える。

 

毎年各社から発表される募集要項の条件さえ満たしていれば、誰でも採用試験を受けることができるので応募者が多く、初期の段階で実施されるエントリー審査をクリアするのも難しい。

 

また、自社養成パイロットの試験は面接をとても重視しており、コミュニケーション能力や協調性、積極性などがみられる。

さらに英語の試験も重要視されているのも特徴だ。飛行訓練の中心は海外で、外国人教官により英語で実施されることから、英語でのコミュニケーション能力は必須となる。

 

2020年度入社までは拡大傾向にあった自社養成パイロットの採用だが、訓練費が会社負担となることから、今後新型コロナウイルス感染症の状況次第では、採用人数の抑制や採用を見送るエアラインが出てくる可能性もある。

航空大学校を卒業してエアラインに就職する

【長所】経済的な負担が少なく就職率が高い

【短所】入学試験は倍率が高い

 

独立行政法人航空大学校は、エアラインパイロットを養成する目的で当時の運輸省が1954年に設立した最も歴史あるパイロット養成機関。現在のエアラインパイロットのうち約40%が航空大学校出身者となっている。

 

就学期間は2年間で、卒業までにエアラインにパイロット要員として就職できるライセンスを取得する。2018年度からはパイロット不足に対応するため、1学年の定員は72名から108名に増員した。

 

入学資格は大学2年修了(短大、高等専門学校、卒業時に専門士か高度専門士の学位が与えられる専門学校卒業でも可)で受験できる。

学歴条件を満たした人で、2021年度入学の場合であれば1996年4月2日から2001年4月1日までの生まれで、過去に第二次試験(身体検査A)で不合格になった人(一部の例外者は除く)以外なら何回でも受験チャンスがある。

 

入学試験は第一次試験から第三次試験までで、第一次で総合I(筆記)、英語(筆記、リスニング)、総合II(筆記)、第二次で身体検査A、身体検査B、第三次で面接試験、操縦適性検査が実施される。

受験者は大学の新卒者と既卒者が多く、合格率は7~10倍程度という難関校でもある。特に近年は身体検査基準が緩和されたことで応募者が増えており、もともと高かった難易度はさらに高くなる傾向にある。

 

入学後は訓練の各ステップで審査があり、同じ審査で2回不合格となると退学になるという厳しさはあるが、これは自社養成制度でも同様のパイロットになるための宿命ともいえる。

卒業時にはJCABの事業用操縦士と多発限定、計器飛行証明のライセンスを取得できるため(航空無線通信士は自力で取得)、エアラインに入社後は地上研修の後、実用機の訓練開始から7~8か月程度で副操縦士としてチェックアウトできる。

 

航空大学校を卒業したからといって、必ず全員がエアラインに就職してパイロットとして活躍できるという保証はないが、近年は毎年100%近くの卒業生がエアラインに入社している。

私立大学でライセンスを取得してエアラインの採用試験にトライ

【長所】学士の学位取得と極めて高い就職率

【短所】大学によって幅はあるが高額な学費

 

大手系列のグループ会社や中堅エアライン、LCCの設立が相次ぐと、入社前に自力でライセンスを取得した人を対象にした募集が徐々に増えていった。その新たな需要に応えたのが大学在学中に航空大学校出身者と同等のライセンスが取得できる私立大学のパイロット養成コースだ。

 

航空先進国アメリカでは大学でライセンスを取得することは珍しいことではないが、日本では東海大学が初めてコースを設定、2006年に工学部航空宇宙学科に航空操縦学専攻を開講して新しい道筋を作りあげた。東海大学の学生は、2年次から3年次にかけてアメリカのノースダコタ大学に留学し、操縦訓練を受けてJCABの事業用操縦士と計器飛行証明を取得して帰国、エアラインのパイロット採用試験を受験する。つまり、大学4年間で学士(工学)の学位と有資格者対象のパイロット募集に応募できるライセンスも取得できるわけだ。

 

東海大学はANAとの産学連携プログラムとして訓練や授業はANAの協力を得て行われているので、エアラインのパイロット訓練のノウハウが活かされた教育が行われている。すでに10期生までが卒業し、多くの人がANAをはじめ日本のエアライン各社に入社している。

 

東海大学に続き2008年度に桜美林大学、法政大学、熊本の崇城大学が、2014年度には千葉科学大学と鹿児島の第一工業大学もパイロット養成コースを開講、大学でライセンスを取得してエアラインに就職するルートが定着した。2019年度には工学院大学も国内外の民間養成訓練校と提携してパイロットの養成を開始している。

 

飛行訓練は海外のみで実施する大学、国内のみで実施する大学、海外と国内の双方で実施する大学があるが、いずれも卒業までにエアラインの採用試験に必要となるJCABのライセンスを取得することは変わりない。

 

私立大学のパイロット養成コースは、早い人なら22歳でプロのパイロットとしてのスタートラインにつけるという魅力がある。現在高校生でパイロットをめざしている人で、少しでも早くパイロットとして活躍したいと考えている人にとっては、魅力ある進路の選択肢の一つとなるだろう。

 

唯一のネックは4年間で1500万円から3000万円程度(学費のばらつきは国内訓練と海外訓練の違いによる)もかかる高額な学費で、これが入学希望者のハードルを高くしている。

現在各大学の努力とともに、航空機操縦士養成連絡協議会が主体となって、無利子貸与型の奨学金「未来のパイロット」を創設、JALも私立大学パイロット養成コースの学生を対象にパイロット奨学給付金制度「日本の翼育英奨学金」を設立するなど、国や業界をあげて学生の支援を行う体制を築き上げている。

 

こういった学費負担軽減に向けた努力などもあり、近年は各大学とも受験者が増えてきており、入学試験の倍率も高くなってきた。

 

パイロット不足が深刻になりつつある現在、私立大学のパイロット養成コース出身者の採用状況は極めて良好で、ANAに加えてJALも私立大学のパイロット養成コース新卒者の採用を行うようになった。自社養成、航空大学校出身者以外でもANAとJALに就職できる可能性があるところも魅力の一つと言えるだろう。

 

なお残念なことに、東海大学では工学部航空宇宙学科航空操縦学専攻の2021年度入学試験を中止した。これは飛行訓練を実施するノースダコタ大学が新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、全ての飛行訓練が中止になったことによる苦渋の決定となったが、2022年度以降は状況を見ながら学生募集を再開するとしている。

 

民間の飛行学校でライセンスを取得しエアラインパイロットをめざす

【長所】自分のペースで訓練が可能

【短所】高額な訓練費と強い意志が必要

 

エアラインパイロットへのルートには、民間の飛行学校(パイロット養成校)で事業用操縦士(陸上多発)と計器飛行証明のライセンスを取得して有資格者対象の採用試験を受験する方法もある。

 

以前はコミューター航空会社や新興航空会社などが不定期に行っていた採用方法だが、JALエクスプレス(現在はJALに統合)が日本のエアラインとして初めて有資格者対象の定期採用を開始すると、徐々に中堅エアラインに広がっていった。

 

航空機使用事業会社が主体となって運営している民間の飛行学校は、学歴や年齢などに係わらず広く多くの人が入校できるので、社会人となって訓練費を蓄えてから入校する人も多い。しかし、自家用までの訓練を訓練費の安いアメリカなどの海外で行ったとしても1500万円以上もの訓練費が必要で、ライセンスを取得しても必ず就職できる保証はないなどリスクもある。  

 

しかし、エアラインで活躍してきたパイロットを教官として迎え入れて、エアラインで通用するパイロットの養成に力を入れている飛行学校や、エアラインの自社養成パイロットの訓練を受託している飛行学校もあるなど、エアラインを見据えた訓練を実践することで就職率も徐々に高くなっている。

2020年にはJALが初めて民間の飛行学校出身者の採用を行ったことでも注目を集めている。

 

一方で、民間の飛行学校は航空大学校や私立大学のパイロット養成コースのように訓練期間を決めずに、自分のペースで訓練が受けられるというメリットがある。ただし、エアラインをめざすのならだらだらと訓練を受けるのではなく、自分を律して訓練に集中する強い意志が必要になる。

 

ライセンス取得後は航空大学校や私立大学でライセンスを取得してきた人と同じ土俵で採用試験を受けることになるので、操縦の技量だけでなく、協調性や社会性、コミュニケーション能力など、人間性を磨いてく努力を続けていくことも忘れてはならない。

 

なお、本WEBサイト運営をしているイカロス出版より、主な民間フライトスクールの情報をまとめた「パイロットにチャレンジ2021-2022」も発行している。実際に民間フライトスクールでライセンスをとりプロパイロットになった方々のインタビューなども掲載されているので、フライトスクールでの免許取得を検討している方にはぜひ参考にしてほしい。

 

F 241

 

パイロットにチャレンジ 2021-2022

発売日:2021年6月30日

サイズ:A4変型判

ページ数:100ページ

定価:1,980円(税込)

 

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イカロスオンライン書店

 

年齢、学歴、そして身体検査 進路を決めるタイミング

 

以上の4つのコースのうちどのコースを選んで挑戦するのかは、エアラインパイロットをめざすことを決める時期によって変わってくる。やはり一番選択肢が多いのは高校生の時で、すべてのコースに進める可能性がある。

 

学費の問題をクリアできて、少しでも早くエアラインパイロットとして活躍したいと考えている人は、私立大学のパイロット養成コースに進学することが一番の近道だ。

 

しかし、高校生の時にはエアラインパイロットになるという進路が固まっていない人は、大学に進学してから受験可能な採用・入学試験に挑戦することになる。

大学に進学して2年次に規定の単位を取得できるようならば、航空大学校の入学試験や大学に2年以上在籍している人も対象にしたエアラインの自社養成の採用試験を受験できる。

次に大学4年生になればANAやJALなどの自社養成が受験できる。自社養成の採用試験と航空大学校の入学試験は併願も可能なので、大学4年次に両方を受験して、合格した方に進むという選択肢もある。

 

自社養成、航空大学校は受験資格に学部・学科の指定はないので、自分が学んでみたいと思っている学部・学科に進めばよい。ただし、航空大学校は文系の学生でも高校生レベルの理系科目を改めて勉強し直した方が第一次試験を突破できる可能性が高くなるだろう。

 

続いて大学を卒業して一度社会に出てからエアラインパイロットをめざすことを決めた人は、募集要項の年齢などに合致していれば自社養成や航空大学校を受験することがきる。

また、民間の飛行学校は、訓練費の目処がつけばいつでも入学することが可能だ。

また、パイロット養成コースを設けている私立大学には、大学を卒業した人を対象にした研究生制度や編入学の制度を設けている大学もある。

 

このように、エアラインパイロットになるための受験チャンスは何回もある。ただし、エアラインパイロットをめざす人は、まずは自分が第一種航空身体検査基準に適合するかどうか医療機関で確認してから受験に臨むことをおすすめしたい。

 

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エアラインパイロットをめざしている人は、経済的な面も考慮しつつ、自分に合ったコースを選択して、悔いのない準備をしてほしい。「パイロットになるんだ」という夢に向かって。

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