日本を代表するエアラインであるANAだが、SNS展開にも力を入れている。Instagramのフォロワー数は約74.2万人、Facebook は約183 万人、X(旧Twitter)は約125.5万人、YouTubeは約18.2万人。2021年7月に開設したTikTokは約57万人のフォロワー数を誇る。(2023年8月時点)
Photos & Text by Murata Takayuki
月刊エアライン2023年10月号(8月30日発売)より転載
SNSのみならず、イベントや記者発表といった広報業務も担当。写真はFLYING HONU3号機の受領時、トゥールーズにて撮影。
コロナ禍からSNSを積極活用
コロナ禍では移動制限があり、大打撃を受けた航空業界。もちろんANAも例外ではない。そんな中、同社はお客さまと繋がるツールとして、SNSを積極的に活用するようになった。現在は広報部のメディア担当13人を中心に、企画、撮影、投稿、編集、そして分析までをすべて自社で担っている。
前田さんは2020年から広報部に所属し、現在は主にInstagramのリールやTikTokなどのショート動画を担当している。グループ企業も多く、たくさんの人が働いているANA。SNSにもいろいろな役割がある中で、「ショート動画では職種を問わずたくさんの社員が登場することで、ANAに親近感を持っていただけるよう制作しています」と話す。
仕事にスマートフォンは欠かせないが、動画編集などでは画面の大きいパソコンも活用する。
SNSごとに異なる投稿の内容
SNSは前述の2つのほかにもFacebookやX(旧Twitter)など、さまざまなメディアが存在する。
「最初はそれぞれの特徴やユーザーの年齢層といった傾向を把握するのに苦労しました」
ショート動画はカジュアルな投稿をメインとしている一方、FacebookやXは飛行機ファンのフォロワーも多いため、写真の綺麗さや文章の内容・長さにこだわっている。
投稿の内容やタイミング、どのメディアで公開するのかは、担当者全員で行なう毎週の定例会で決めている。ニュース性のある話題であれば当日に公開することもあるが、例えばYouTube用のストーリー仕立ての動画などは、事前調整も含めると投稿まで1~2か月かかることも珍しくない。
当初はメディアの特性に合ったコンテンツ作りも難しく、苦戦した時期もあったという。
「SNSでは厳しいコメントをいただくこともありますが、1つ1つ必ずチェックしてメンバーで共有しています。アピールするだけの一方通行とならないよう、お客さまの反応やご意見も取り入れて、より良いコンテンツを提供できるよう努力しています。投稿するときは本当に緊張しますが、それだけに良い反応をいただけたときは嬉しいですね」
InstagramやTikTokで人気のダンス動画はダンスが得意な社員が出演しているが、例えば直近のANA中部国際空港からの投稿はスタッフが一生懸命練習して臨んだ甲斐もあって、とても好評だったそうだ。
入社後の最初の配属先が旅客サービス部門で、直接お客さまの声を聞く機会が多かった前田さん。「コロナ禍では個人的にも、会社としてもお客さまとの距離が開いてしまいましたが、いまはSNSを通じて、色々なご意見やコメントをいただけるのが嬉しいですね」と話す。
伝えたいANAの“人”の魅力
前田さんが主に担当しているInstagramとTikTokは、ANAを知らない若い世代に知ってもらうツールにもなるうえ、就活生の企業研究にも活用してもらえるようなコンテンツも提供している。また、TikTokは海外のユーザーも多く、日本以外の人たちにもANAのことをもっと知ってもらいたいという気持ちもあるという。
「ANAに入社して一番良かったと感じているのは、仕事ができるうえに人柄も魅力的な社員がたくさんいることです。撮影のためさまざまな職種の社員と会う機会がありますが、SNSを通じて多くの人にこうした魅力が伝わればいいな、と思っています」
編集後記
今やどの業界にも欠かせないSNSを通じた広報活動。メディアというフィルターを通さず、自社の魅力を直接お客様に伝えることができる強みを活かし、ANAは日本の航空業界でトップクラスのフォロワー数を誇る。一見何気ないように見えるダンス動画にも「ANAで働く人の魅力を知ってほしい」という思いが隠されていて、手軽に見えて実は奥深いSNS広報の世界を知ることができた。
今回お話をうかがった方
全日本空輸株式会社
SNS・メディアプランニングチーム
前田怜那さん
2017年4月入社。東京都出身。中学・高校時代はカナダで過ごし、アメリカの大学で国際ビジネスを専攻。入社後はANA成田エアポートサービスに出向し、国際線の旅客サービスを担当した。2020年4月に広報部に異動、SNS関連の業務に従事する。
【プライベート】
「電車で数駅分を歩くことも珍しくないほど、散歩が好きです。音楽を聴きながらウォーキングを楽しんだり、カフェを探したりしています」