ウエストジェット航空（APG JAPAN）鈴木 奈奈さん - 航空業界専門の求人サイト「航空人WEB」

東京・赤坂のオフィスで勤務する鈴木さん。「就航前日の4月30日には、カナダ現地ガイドの方が運営する動画チャンネルのライブ配信にも出演しました」。

営業はマルチプロモーター

2023年5月1日、カナダのウエストジェット航空が成田＝カルガリー線を開設した。その就航を裏で支えたのが鈴木さんの所属するAPG JAPANだ。APGはフランスに本社を置き、航空会社へ各種サービスを提供する世界最大級のサービスプロバイダー企業で、ウエストジェットが就航するカナダ本国以外の国で営業、販売業務を行なっている。日本はウエストジェットにとって初のアジア路線であり、その就航に伴いAPG JAPANにウエストジェットの営業所が設立された。　

一言で航空会社の営業と言っても、それは普段、我々が目にすることのできるものではないため、どのような仕事なのかを理解するのは難しいかもしれない。

実際に座席を販売するのは旅行会社で、その旅行会社へ座席を販売するのが代理店営業の仕事だと、鈴木さんは説明する。

「例えばウエストジェットの場合、1便320席あります。いかに多くのお客さまにご利用していただけるか、スケジュールや就航都市の紹介、席やサービス、適切な運賃の案内など、旅行会社への販売を促進することが基本となり、その販促方法は航空会社ごとに様々な戦略を練り競争していきます」

「販売戦略においては、不正競争防止法や独占禁止法などを意識しながら公正な取引を行なう必要があります。また観光局と協働し、カナダ全体と、カルガリーがあるアルバータ州の観光産業を盛り上げることも要求されます。そのため旅行会社並びに観光局と良い関係を築きカナダの商品を盛り上げ、たくさんのお客さまにカナダへ旅行してもらうことで、航空会社だけではなく旅行会社の利益、カナダの観光産業の発展に繋げていくことも必要になります」　

座席を売るだけでなく、現地の観光をプロモートしたり、法に準拠しているかを確認したりと、航空会社の営業は多岐にわたる。

必要なことは、文化の相互理解

日本における営業拠点の立ち上げにはオンラインミーティングに加え毎月1回、カナダの営業本部から担当者が来て打ち合わせを行なった。日本特有の商慣習や、旅行業法の壁、販売流通ルートなどについては、旅行代理店の協力を得て説明もしてもらった。　

もとから敷かれたレールの上を走るレガシーキャリアと異なり、新たに迎える会社ではお互いの文化が全く違うため、まずレールを敷くための土地を耕すことから始めなければならない。

「レールを敷くにはまず、私たちがウエストジェットの文化を理解する必要がありました。彼らの社内文化を理解しない事には、いくら他社の航空会社で経験を積んでも、英語が使えても、話が平行どころかお互い反り返りの状態でどんどん複雑になっていきます。語学力よりもお互いのコミュニケーション力が必要でした」　

土地を耕しレールを敷いて、その幅を合わせながら問題を解決してゆく。これを就航決定からほぼ４か月でこなしたのだから、想像を超える苦労がいくつもあったことだろう。３歩進んで２歩下がったとしても、驚きと発見の日々で掴んだものとその達成感は、揺るぎない自信としていつまでも自分を支えてくれるに違いない。　

ウエストジェットの本社から贈られた、「あなたたちの協力がなければ、この就航はうまくいかなかった」の一言が本当に嬉しく胸を打ったと、笑顔を浮かべる鈴木さん。就航によって建てられたマイルストーンは、新たな目標達成へ向かう大きなモチベーションとなった。

写真の温かい直筆メッセージは本文の最後に触れた、ウエストジェット副社長から届いたもの。