羽田空港、成田空港で走るオレンジ色のバス。「リムジンバス」で知られる東京空港交通の車両だ。空港と各地を結ぶ空港アクセスバスのほか、オープンスポットに駐機している飛行機と空港ターミナルを結ぶランプバスの運航も担っている。旅客機の運航に不可欠なランプバスのドライバー業務について話を訊いた。
photos & text by AIRLINE
月刊エアライン2022年11月号(9月30日発売)より転載
安全運転はもちろん、飛行機の運航を妨げることがないよう、真剣なまなざしで注意を払う。
Q:入社しようと思ったきっかけを教えてください。
知人から、私の性格にこの職場の雰囲気が合うと思うからどう?というお声がけをいただいて応募しました。実際に入社してみたら、すぐにみんなと打ち解けて、休憩所でもみんなでいろいろと話もして余計なストレスがなく、楽しく仕事しています。当時は大型の運転免許も持っていませんでしたし、お客さまを乗せて運転をすることにプレッシャーもありました。ただ、免許取得にあたっては養成制度などでフォローされる環境だと知り、そのことも入社を決める動機になりました。
Q:ランプバスの運転に必要な免許やコツはありますか?
運転免許証としては大型2種免許になります。加えて、制限区域内を走行するための資格があり、これも試験を受けて合格する必要があります。羽田空港に配属されて2週間ほど勉強して試験を受けました。バスの運転は、車幅の感覚をつかむのに時間は必要でしたが、慣れれば特に難しくありません。パワーもあるので、多くのお客さまを乗せたときも頑張って走ってくれます。制限区域外では通常の車幅のバスを運転していて、同じ日にランプ内外のバスを乗り換えて業務するときには感覚の違いに戸惑うことも当初はありましたが、今はそのようなこともありません。Q:仕事のなかでうれしいと感じる瞬間はどのようなときですか?
ランプバスは扉が3つあって、近い扉から降りられる方が多いのですが、後ろの方からわざわざ前方まで来られて声をかけてくださるお客さまもいらっしゃいます。お子さまに「ありがとう」と一言いただくこともあり、やはりうれしいですね。管制センターでは飛行機のランプへの到着時刻などを予測して効率よく配車。混雑する羽田空港だけにオープンスポットへ急に変更されることも多く、配車する側もドライバーも臨機応変な対応が求められる。
Q:日々の仕事で難しいことや、気を付けていることはありますか?
一般道とは異なり、制限区域内は歩行者や自転車の飛び出しなどはないのですが、飛行機の挙動をちゃんと見る必要があります。最悪の場合は飛行機の運航を止めてしまうこともありますので、“このぐらいの距離をとらないといけない”や“飛行機のランプが点いたら止まっていないといけない”など、すごく神経を使って周囲を観察しています。特に雨が降っている夜は見通しがわるいので、余計に神経を使います。また、台風が来て、あちこちに物が散乱する一般道を走ってクルーを送迎する業務をしたときも大変な思いをしました。Q:コロナ禍では稼働が減りましたが、その際の心境はいかがでしたか?
コロナでお客さまが減って、それがどのぐらい続くか先が見えない時期が続いて、不安はずっとありました。ただ、最近は仕事が増えています。国内は移動されるお客さまが一気に増えましたし、海外旅行も緩和を受けてこれから人が動くと思いますので、この先、もっと忙しくなると思っています。
Q:ランプバス運転手のやりがいはどのような時に感じますか?
配属当初の課長が「羽田に到着するお客さまを私たちが1番最初にお出迎えし、逆に出発されるときに最後にお見送りするのも私たち」とおっしゃっていたのですが、お客さまの大切な時間に、私たちが接することで少しでもよかったなと思ってもらえることが、自分たちのやりがいになると思って、常にそのことを考えています。
編集後記
制限区域内という特殊な環境で、日々大型バスを運転するプロドライバー。運転士の資格を持つスタッフも多いという管制センターとともに、刻一刻と変わる状況にチームとして対応する姿が印象的だった。また、旅客の立場から見ると、接客面ではエアラインの地上旅客スタッフや客室乗務員の存在感が強いし、グランドハンドリングのように飛行機を飛ばすための作業をしているわけではないが、旅客がいなければ旅客便は成立しない。このチームもまた、旅客機の運航に欠かせないのだと改めて感じる取材だった。
今回お話をうかがった方
東京空港交通株式会社
運行部 羽田ランプ課
東海林謙二さん
東京都出身。社会人経験を経て、2017年に東京空港交通に入社。羽田空港での業務一筋5年目のバスドライバー。ターミナルと飛行機を結ぶバスに乗員乗客を乗せて運転している。
【リフレッシュ方法】
休日は家族と過ごす時間を大切にしているという東海林さん。学生、社会人とラグビーを続け、幼少期から練習時に連れて行くなどしていた息子さんも、現在は地元のラグビースクールに通っている。東海林さんはそのコーチをしているそうだ。