スイスを拠点に、全世界でケータリングサービスを提しているゲートグループ。機内食の製造が注目されがちだが、その機内食のほか、機内で必要となるさまざまなものを、飛行機が地上にいる間に確実に搭載することも重要な役割だ。日々ローダー車を運転してその役割を担う橋本さんに、搭載業務について話を聞いた。
photos & text by AIRLINE
月刊エアライン2022年9月号(7月29日発売)より転載
フードローダー車へ搭載する直前のカートをチェックする橋本さん。もちろん機内食のキッチンでも確認しているが、その最終チェックは搭載課が行なう。
Q:御社に入社しようと思ったのは?きっかけを教えてください。
小さいころ旅行に出かけるとき、展望デッキから見る飛行機や空港の職員にとても魅力を感じ、物心が付いたころには空港で働きたいと思っていました。また、両親ともパティシエで、料理関係の職に就いている親戚も多かったので昔から食に興味があり、好きなこと2つを両立できると思い入社しました。
Q:ご担当されているのは、どのような業務でしょうか?
機内食などを空港まで運搬、飛行機への積み込みをする業務を行なっています。運搬だけではなく、お客さまの食事や飲み物がカートに正しくされているか、機用品と呼ばれる食器類やブランケットなどのアイテムがすべて準備されているかもチェックします。飛行機への搭載後はクルー(CA)さんと、お客さまの食事の数やメニューを一緒に確認します。また、航空会社によっては、飛行機の上でクルーさんからドリンクや消耗品の不足数を伺い、その場で必要な数を搭載することもあります。搭載課は各部署が用意、準備してくれたものをアンカーとして扱う重要な業務ですので、日々緊張感を持って搭載しています。Q:どのような気を付けて業務を進めていますか?
やはり安全第一です。食品を扱うので温度管理などの衛生面も気を付ける必要がありますし、空港では同時進行で貨物の積み込みや機内清掃が進みますので、他社さんともコミュニケーションをとって、安全に作業が行なわれるようにしています。機内食をチェックする際には、アレルギーや宗教食に特に気を遣います。勉強していても思い込みや間違いがあるかも知れないので、フライト前に必ずマニュアルに目を通していますし、それでも不安な時はシェフなどに材料を確認しています。
カートをローダー車へ搭載。飛行機への搭降載時には、1台ずつ使用済みのカートと入れ替えるように搭載し、新しいカートが正しい位置に間違いなく搭載されるように作業を進めるという。
Q:この仕事をしているなかで、難しいと感じたことはありますか?
台風や機材メンテナンスなどが発生したときです。出発が大幅に遅れた場合には、衛生上の都合で、機内食を破棄して再度作り直すこともありますが、食器の再洗浄、調理、盛り付けなど、航空会社から指定された時刻に間に合うよう、各部署が協力して臨機応変に対応する必要があります。また、外資系航空会社のクルーさんに食事の内容を英語でお伝えするのも難しい業務です。食材の名前を知っていなければなりませんし、日本ならではの和食は料理方法なども、分かりやすく丁寧に伝える必要があります。
Q:働きがいを感じる瞬間はどのようなときでしょうか?
直接お客さまと接することは少ないですが、「クルーさんが機内でスムーズにサービスを提供できる環境を作ることで、お客さまに快適に過ごしていただける」と思って搭載業務をしています。クルーさんから「分かりやすい」「いつもパーフェクト」とお褒めいただいたり、顔を覚えていただいた担当便のクルーさんに、「前回のフライトも問題なかった」と聞くと、とてもうれしくなります。
Q:航空業界を目指す方へメッセージをお願いします。
航空業界というとパイロットやCAが思い浮かぶと思いますが、そのほかにもさまざまな職種の人が飛行機の運航を支えています。いろいろなことに挑戦して経験を積み、自分の適性や多くの企業を知ったうえで就職すると、入社したあと、イメージ通りに自分の経験を活かし、楽しいと思いながら働けると思います。同じ航空業界で働けることを楽しみにしています。
編集後記
文中に「アンカー」とあるように、調理・準備されてカートにセットしている機内食や機用品の最終チェックも搭載業務の仕事だ。もちろん、機内に積み込む際にも間違いは許されないし、クルーとの対話を行なうフロントエンドの役割もあり、“搭載”の2文字からは想像できないほど注意力も知識も求められる業務といった印象だ。そしてなにより、自身の仕事の先にいる会えない乗客のことを考えて業務をしている心意気がうれしい。
今回お話をうかがった方
ゲートグルメ・ジャパン 羽田支店
オペレーション(搭載課)
フライトコーディネーター
橋本拓郎さん
大阪航空専門学校を卒業後、2015年にゲートグルメ・ジャパンに入社。搭載課一筋7年の中堅スタッフで、VIPフライトや新規航空会社へのオペレーション立ち上げも経験。OJT教育などの人材教育にも携わる。
【リフレッシュ方法】
「有給休暇とリフレッシュ休暇を組み合わせて2週間ほどの長期休暇を取り、海外旅行などによく出かけています」と話す橋本さん。旅行先でも食への興味が高く、ご当地グルメ、特にコーヒーとケーキが楽しみだという。