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シンガポール航空 長崎 功さん - 航空業界専門の求人サイト「航空人WEB」

シンガポール航空 長崎 功さん

 

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旅客機を扱う航空整備士と聞けば、国内のエアラインで働く姿を想像する方が多いと思う。しかし、日本に就航する海外航空会社で活躍する人もいるのだ。例えば今回取材で訪ねたシンガポール航空は国内5空港に乗り入れ、それら各地における整備作業全体を統括するのが整備部長の長崎さんである。

photos & text by Konan Ase

月刊エアライン2022年7月号(5月30日発売)より転載

imatoki32 001羽田空港第3ターミナル内にある長崎さんのオフィス。羽田発着便が増えたことで、成田空港オフィスに加えて新たに開設された。

Q:シンガポール航空に入社するまでの歩みを教えてください。

バイクや車など機械いじりが好きで、最先端の技術を詰め込んだ飛行機にはさらに魅力を感じていました。航空専門学校を卒業後に外資系エアラインで働くことを目標に渡米し、大学でアメリカの整備士資格(FAA A&P)を取得しました。旅客機の整備には国ごとの整備士資格が必要ですが、FAAの資格はそのまま通用する国も多いのです。

 

当時は日本で外資系エアラインに就職するには、英字紙の募集広告が一般的でした。留学中から家族にもチェックしてもらい、帰国後に就職。そこで整備士として働きながらEASA(欧州航空安全機関)の整備資格なども取得し、マネジメントの経験も積んだうえで2013年にシンガポール航空に入社しました。同じ航空業界で働きながらも、新型旅客機をいち早く導入するシンガポール航空にはいつも注目していました。最先端の技術に触れたいという気持ちから航空業界を志した私にとっては、憧れの航空会社でした。

imatoki32 002新機材は日本就航を前にシンガポールで訓練を受ける。「まるで資格マニアのようです」というほど多くの型式限定を取得してきた。シンガポール航空は常に最新鋭の機材を世界に先駆けて導入しており、整備士としても新しい技術を学ぶことができるのが魅力という。

Q:現在は部長職ですがご自身も有資格者ですね。
当社は日本の5空港(成田・羽田・関西・中部・福岡)に就航していますが、そのすべての就航機材の資格を持っています。当社では必要な能力と知識を身につけるために常にトレーニングの機会が用意されており、それぞれの機種についてもシンガポールで数か月間ずつの訓練を受けました。試験はいつも大変ですが、飛行機好きにはうれしい環境です。 実際の整備作業はシンガポール当局が認定した整備委託会社にご協力いただいており、通常はその管理・責任者としてサポートするのが主な役割となります。とはいえ悪天候などで予定外に飛来してきたような場合、委託先の有資格整備士が対応できないこともあります。その場合は私が出発確認をしますので、やはり自らも資格を取る必要があります。
Q:円滑な整備作業のためにはどのようなことを心がけていますか。
当社の旅客機は平均機齢が若く、ハブ空港であるチャンギ国際空港では自社ベースでの定期整備も行なわれています。それでも機械である限り不具合の可能性はありますし、部品交換が必要になることもあります。しかしどの航空会社もそうですが、就航地すべてに膨大な予備部品をストックできるわけではありません。自社にない部品は他社からお借りすることになりますが、そのためにも日頃から様々な航空会社と良好な関係を築くことが大切です。そうした関係があれば、他社がシンガポールで困っているときには私たちが力になることもできます。営業上はライバル同士であっても、安全運航のためには協力しあう文化が航空業界にはあります。その前提が日頃からの良好な関係なのです。
 
Q:業界を目指す若い読者の皆さんに向けて。
海外エアラインでは、整備士として自分の役割を果たすだけでなく、マネジメント等の役職を担うことも多くあります。協力他社を含めて力を合わせ、限られた時間内で安全かつスムーズに作業を終えるためには、従事する全てのメンバーに感謝の気持ちを持つことが大切だということを、常に心に留めています。もちろん英語でのコミュニケーション能力も必須ですが、さらに様々な文化や宗教、価値観など互いを尊重する「リスペクト」の気持ちを持って働き、信頼関係を築いていくことも大切です。
 
どの業界をめざすにしても、考えているだけでは何も始まりません。興味を持ったならば、まずは第一歩として調べてみる。そして次の一歩として行動に移してみる。たとえ小さくとも一歩一歩踏み出していくことで、様々な出会いも生まれチャンスは広がっていきます。そのために、今でも私は「気づいた時にすぐ行動する」ことを心がけています。

編集後記


高校時代、自ら整備したバイクに乗って京浜島で飛行機を眺めていた。アメリカ留学では、好きなサーフィンが楽しめそうな海沿いの大学を選んだ。実は意外にヤンチャな若者だったのかもしれない長崎さんの口から何度も聞かれたのが「感謝」という言葉だ。日々の業務を担う委託先の整備士やスタッフ、遠くシンガポールからサポートしてくれる本社、そして夢を支えてくれる家族と、多くの乗客の皆さん。たくさんの人たちへの感謝の気持ちがあるから、安全には妥協できないと考えている。

今回お話をうかがった方

シンガポール航空
日本地区整備部 部長
長崎 功さん

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航空専門学校を卒業後、アメリカの大学に留学してFAAの整備士資格を取得。帰国後に外資系エアラインに就職し、整備士として経験を積みながら、さらにEASAなどの国際的な整備士資格を取得。2013年にシンガポール航空に入社した。747-400、777、787、A330、A350XWB、A380の型式限定資格を保有。

 

【リフレッシュ方法】

休日は家族と出かけたり、機械いじりが好きなので、家で何か壊れた時には自分で作ったり修理もします。また体力維持とリフレッシュのため、早起きして毎日5キロ程度走ることが日課です。時間ができれば、留学時代から続けているサーフィンにも行きます。

     

 

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