航空機リースのビジネスには日本の企業や金融機関も積極的に参入していて、アイルランドなど海外に設立した関連会社が新型機のオーダーリストに名を連ねる機会も多い。とりわけ1978年に航空機ファイナンス事業に参入したオリックスは、40年以上にわたり業界で活躍してきた老舗。東京本社の航空事業グループで活躍する水元さんに話を聞いた。
photographs by Fukazawa Akira
月刊エアライン2022年2月号(12月28日発売)より転載
2021年春にオープンしたばかりの本社オフィスで取材に応じてくださった水元さん。航空機リースの世界を目指す若い人には「英語力はペラペラではなくても、アレルギーがない程度の状態にしておいた方がこの仕事には関わりやすいと思います」
Q:入社のきっかけと現在までの社歴について
実家の家業で取引があり、オリックスという名前は子供の頃から知っていました。ただ具体的に何をしている会社かはわからず、よく営業の人が来ているなとか、家にイチロー選手のサインがあるなとか、その程度の認識だったのですが、大学時代の就職活動でインターンシップに参加したことが、オリックスを志望する動機になりました。当時は実際に支店に配属されて、お客様の了解のもと一緒に営業活動に同行して会社の雰囲気を知ることができたんです。私が付いた女性の課長と担当者の存在も、将来をイメージするきっかけになりました。現在オリックスの女性社員の比率は約4割に達しています。
入社は2009年4月で、不動産や各種ローンなどの債権回収を行なう部門で4年、続いてオリックスの幅広い商材を取り扱う法人営業の部門で5年勤務した後、2018年に航空事業グループに配属されました。それまでは航空機に関わる部門で勤務することなど、全く想像していませんでした(笑)。
Q:航空事業グループについて教えてください
オリックスは、単通路機と双通路機を合わせて約230機保有・管理しています。航空事業グループには約20名が在籍するほか、航空機リースの発祥の地としてビジネスが盛んなアイルランドのダブリンに100名規模のORIX Aviationと、その香港オフィスの3か所で業務を行なっています。
航空機の購入やリース契約を実際に行なうのはORIX Aviation で、東京の航空事業グループはこうした案件ひとつひとつを精査して投資判断を行ないます。
このほか、オリックスの保有機だけでなく、投資家のお客様が運用資産として所有する機体の管理を私たちが担当するという業務もあります。こうした機体については、航空会社からのリース料が期日どおりに入金されているか、定期整備や所定のエンジン整備など機体が適切にメンテナンスされているかといった項目を確認してお客様に報告する必要があり、私は現在40機ほどを担当しています。
Q:航空機リースとはどのようなお仕事でしょうか?
それまでの法人営業の業務では扱う商材が幅広いため、様々な分野の知識を広く網羅しておく必要がありました。しかし航空事業グループでは専門的な知識を深く蓄える必要があります。配属されて間もなく、アイルランドのORIX Aviationに2か月間派遣されたのですが、現地には航空機の営業、技術、法律、会計など各分野のプロフェッショナルが多数在籍しており、疑問をぶつければすぐに専門的な回答を得ることができました。配属当初からそうしたスタッフたちとともに、お客様である航空会社と価格などの交渉を直接的に行なう現場を見ることができたのは、とても貴重な経験でした。
新たな案件に取り組むときには、まず東京とアイルランド、香港のスタッフとの間で担当チームが立ち上がり、クロージングするまでに2~3か月の期間を要します。英語に対しては学生時代の留学経験がありましたが、専門的な内容もすべて英語でやり取りする必要があり、さらに東京の17時に朝9時を迎えるアイルランドとの時差により、四六時中そうした業務連絡が入り続ける環境に体が慣れるまでは時間を要しました。
また、コロナ禍のあとはアイルランドへの出張機会もなくなり、これまで会ったことのないメンバーと仕事を共にする機会が増えたことで、より慎重かつ細やかなコミュニケーションを心がけています。こうして時差や文化を越えて、異なる感覚を合わせながら進めていくことが求められる仕事です。
編集後記
入社後ふたつの部署で9年の勤務を経たあと、「それまで想像もしていなかった」という航空事業グループに異動し、今ではチームを束ねる立場に至ったプロフィールに、筆者はまず驚いた。航空機という特殊な商材を扱う仕事ゆえ、取材当日に話しを聞く瞬間まで、航空機だけを一貫して突き詰めてきた経歴と思い込んでいたのだ。多種のビジネス領域で存在感を放つオリックスという会社だけに、活躍のフィールドは広い。そのなかで努力を重ね、高い専門性とスキルを身に付けた水元さんの“恰好良さ”が光る取材だった。
今回お話をうかがった方
オリックス株式会社
輸送機器事業本部 航空事業グループ
水元頌子さん
2009年4月入社、航空事業グループには2018年4月から在籍。アイルランド(ORIX Aviation)への派遣も経験し、現在は管理職である「ヴァイスプレジデント」としてチームを束ねる立場だ。学生時代にはオーストラリアでの留学経験あり。
【リフレッシュ方法】
元々スポーツをしていたので体を動かすことが好きで、10年前から、パーソナル・トレーニングに通っています。