日本で唯一の貨物専用航空会社である日本貨物航空(NCA)。
今回ご登場いただくのは、整備グループのMMCチームに所属する竹ノ内 啓昭さん。
機材に不具合が発生した際の修復計画や各種調整用業務を統括し、ボーイング747-8貨物専用機の運航を支えている。
photographs by Fukazawa Akira
月刊エアライン2021年2月号(2020年12月28日発売)より転載
勤務は約8時間のシフト制。取材日は15時から24時までの遅番だった。不規則な勤務に対応できるよう体調管理には気を配っているという
photo:NCA
Q:仕事内容を教えてください
MMCチームの主な仕事は、運航機材の統括業務です。NCAがオペレーションしている8機の747-8Fの運航・整備状況を確認し、不具合が発生した際は修復作業計画を作成し、ダイヤ調整をはじめとした各種調整業務を行ないます。この役割をメンテナンス・チーフ・オフィサー(MCO)が担当しています。
一方で、ライン整備を委託している海外基地における委託先の管理業務も担当します。航空日誌を確認するなどして次のフライトに問題がないかを確認し、不具合が発生した時は委託先へ作業指示を出します。この役割はテクニカル・スーパーバイザー(TS)が担当しています。
MCOとTSがふたり一組となり、3交替24時間体制で8機のオペレーションを統括しています。
Q:この仕事を志したきっかけはなんですか?
高校の修学旅行で初めて飛行機に乗りました。羽田から函館まで、ボーイング747です。これがきっかけで航空業界に興味を持ち、航空専門学校へ進学しましたが、卒業の年はSARSが流行したタイミングということもあり、航空業界への就職はかないませんでした。その後、就職したビルの管理業務でNCAの整備事務所を担当する縁が。その際に感じた雰囲気が自分の感覚とあっていたため、こういう職場で働きたいと思い、NCA自立化のタイミングで中途採用に応募しました。
Q:日頃どういったことを心がけて業務に取り組んでいますか?
イレギュラーがあった際に迅速に対応できるよう、日頃から情報収集に努めています。現場にいない我々は、手元の情報で全体的な指揮をとる必要があります。機材整備の情報、パイロットからの情報、ちょっとした言動が事態解決のヒントになることもあるので、収集できる限りの情報を取りこぼさないように気を付けています。
また、NCAの機材は8機しかないため、1機を遅らせてしまうとそれなりにインパクトがあり、さらに運航を止めるとなるとかなりの勇気がいります。しかし、「飛ばせるんじゃないのか」と意見が出たとしても、安全を最優先して「こういった理由で運航を止めます」とストップをかける勇気を持たなければなりません。周囲の意見に流されず、安全第一でしっかりと判断しようという点は常に心がけています。
Q:今後の目標を教えてください
2006年にNCAが自立化して14年が経ちました。今までは他社での経験が豊富な社員が主導してきましたが、そろそろNCA生え抜きの社員が上に立つ世代になりつつあります。そういった層を中心に、NCAらしい風土を作り上げることができたらいいなと考えています。飛行機を安全に定時に飛ばすというひとつの目標に対して、より協力しあえる環境を育てる。そして、NCAというひとつのブランドを皆で作り上げていく認識を共有することができれば、もっと仕事が楽しくなると思います。そのためにも、率先して他者とコミュニケーションをとるようにしています。互いが必要としている情報を与え合い、理解を示したうえで必要な意見はしっかりと伝える。本当のチームワークを作るために、そういった心がけを大切にしていきたいですね。
Q:航空業界を目指す学生さんへ
私は新卒のタイミングで志望した航空業界に就職できませんでした。一時は別の仕事に就いていましたが、諦めずにやってきたからこそ、今ここで働いています。別業種に就いていた2年間のハンデもありましたが、一等航空整備士の資格も取ることができました。NCAは日本の物流の柱を担っていると自負しています。今は厳しい状況ですが、必ず航空需要は戻ってくるはずです。どうか諦めずに航空業界を目指してください。
☆Pick Up 竹ノ内さんがいつも持ち歩いているもの☆
長女の修学旅行土産であるジンベエザメのキーホルダーと、次女からの手書きのお守り&四葉のクローバーはモチベーションアップに効果抜群。
編集後記
「燃料と貨物をたくさん積んだNCAの重い機体が、成田空港を発つ他のどの機体よりも低く離陸していく姿を見ると、ああ、貨物をいっぱい積んでいるんだなと誇らしく感じます。こういった感慨はNCAならではではないでしょうか」。そう貨物専用便の魅力を語った竹ノ内さん。自らの経験を踏まえ、航空業界を目指す若者に対して、諦めないでほしいとエールを送ってくださいました。
NCAは日本で唯一の貨物専用航空会社であると同時に、現在は日本で唯一のボーイング747オペレーターでもあります。唯一無二の航空会社にふさわしい「NCAらしさ」を目指して挑戦を続けたい。そういった意気込みが伝わるインタビューでした。
今回お話をうかがった方
日本貨物航空株式会社
整備グループ
整備部 MMCチーム(兼)整備第1チーム
アシスタントマネージャー
竹ノ内 啓昭さん
2004年に中日本航空専門学校を卒業。ビル管理業務を経験した後、2006年にNCA入社。2007年から整備チームで現場作業に従事し、2019年12月よりMMCチームに所属。2009年8月一等航空整備士を取得。
【リフレッシュ方法】
状況が落ち着いたらアウトドアに挑戦したいと思い、寝袋と車中泊用のマットを購入しました。湖のほとりで美味しいコーヒーを飲みながら朝日を眺める休日に憧れます。
【座右の銘】
今できることを全力で