航空会社にとって必要不可欠である、安全な運航を実現するための仕組みづくりとその円滑な運用。
今回ご登場いただくのは、ジェットスター・ジャパンの運航基準コーディネーターである時任祐汰さん。
コクピットに搭載するタブレット端末や書類の管理、重量/重心位置管理に関連する業務など、運航に有益なシステム作りとその管理を担い、バックオフィスから円滑な運航を支えている。
photographs by Fukazawa Akira
月刊エアライン2020年12月号(10月30日発売)より転載
成田空港の本社オフィスに在籍するオペレーションサポート部のスタッフは8名で、運航基準コーディネーターは時任さん一人。運航支援にかかわる多種多様な業務をマルチにこなす知識と柔軟性が求められる
Q:仕事内容を教えてください。
仕事内容は多岐にわたりますが、例として、パイロットが運航で使用するタブレットの管理、飛行機の重心を管理するためのシステム運用、飛行機から排出される二酸化炭素量の把握、業務内容に関連する社内規定の改訂、コクピット搭載書類の管理などを行なっています。バックオフィスで運航を支える仕事ですが、コクピット内に搭載している書類の確認や差し替えのために機内で作業することもあります。
Q:この仕事を志したきっかけはなんですか?
実家の部屋の窓から宮崎空港にアプローチする飛行機を見ることができたのですが、高校生の頃、旋回する飛行機を眺めながら「どうしてあの大きな鉄の塊が空に浮くのだろう」と疑問を持ったことがきっかけで飛行機に興味が湧きました。その後、関東の大学に進学して航空宇宙を専攻。帰省のため飛行機を使った際に、多くの搭乗者が笑顔で降機していく姿を見て、飛行機に携わる仕事がしたいと航空業界を目指すようになりました。
他にも何社か受けたのですが、面接などでジェットスター・ジャパンの社風や、多岐にわたる専門分野を早くから経験できる業務内容などに触れ、より自身が成長できる道として入社を決めました。
Q:日頃どういったことを心がけて業務に取り組んでいますか?
情報を発信する際、受け取る相手が理解しやすい内容となっているかどうかを気にかけています。パイロット、運航管理者、バックオフィスのスタッフと、あらゆる職種の人に対して連絡する立場にありますが、専門用語の多用で理解しづらくなっていないか、現場の運用に即した発言なのかといった点をよく確認するようにしています。
特にパイロットが実施する手順や規定を作成する際には、矛盾点がないか徹底的にシミュレーションしながら作成する必要があります。もちろん実際に操縦したことはありませんから、入社したての頃は想像力も乏しく、現場に即した仕様づくりに苦労しました。今ではだいぶ鍛えられたものの、まだまだ足りない部分も多く、より一層経験を積みながら頑張りたいと思っています。
コクピットに搭載する運航マニュアルや各種証明書などの書類の一部だけでもこれだけの分量があったが、今はタブレット1台に集約されている。そのアプリケーションの管理やOSのアップデートなども時任さんの仕事だ
Q:今後の目標を教えてください
自分の市場価値をもっと上げていきたいと思っています。同業他社においては新卒ではなかなかできないような経験をさせてもらっていますので、成長できる環境を最大限に活かし、会社のため、そして自分の将来のために焦らず成長していきたいですね。
現在担当している仕事は、正確な知識を習得しながら経験を積むことが大切で、一人前になるには10年ほどかかるといわれています。新卒で入社して4年、なにが最善か判断する力は身についてきたと感じていますが、まだまだ知らないことも多いと実感しています。まずは運航基準コーディネーターの仕事を極めるためにもっと勉強していきたいと考えています。
2019年4月に宮崎県で開催されたサイクリングイベント、GREAT EARTH第8回 宮崎・日南海岸ライドに参加。先輩とお揃いのジェットスターユニフォームに身を包み、見事初挑戦で100kmを走破した
Q:航空業界を目指す学生さんへ
航空業界には、飛行機を安全に運航し、お客様を安全に目的地までお連れするための様々な仕事があります。それは飛行機を利用する際に直接目にする仕事だけではありません。私が担当している業務も、就職して実際に担当するまで知りませんでした。就職活動の折、自分に合う仕事があるのだろうかと考えることがありましたが、実際に航空業界には多種多様な仕事があり、今後も発展することで活躍できる場はさらに広がります。
今は業界全体が大きな打撃を受けており、就職には難しい時期かもしれません。ただ、航空業界で働きたいと思った志を、どうか忘れないでください。様々な場面でお客様の手助けとなれるよう、一緒に航空業界で頑張りましょう。
編集後記
「発信する情報が、受け取る相手にとって理解できる内容となっているかどうかを心がけています」という言葉のとおり、運航基準コーディネーターの多岐にわたる仕事内容をわかりやすく解説してくださった時任さん。オペレーションサポート部で管理しているタブレット端末は300台を超えるとのことですが、アプリの管理やOSのアップデートなど、運航に支障をきたさないようにスケジュールを組んで工夫しているというお話しも聞くことができました。
同じチームの先輩にすすめられて始めたというロードバイクについては、状況が落ち着いたら日本各地のイベントに参加してみたいとのこと。ジェットスター・ジャパンの国内就航地は16都市。こういう楽しみ方ができるのも、航空人ならではですね。
今回お話をうかがった方
ジェットスター・ジャパン株式会社
運航本部 オペレーションサポート部
運航基準コーディネーター
時任 祐汰さん
4年生大学では航空宇宙分野を専攻。2017年、ジェットスター・ジャパンで初の新卒採用として入社し、運航本部 オペレーションサポート部に配属される。以降、現職である運航基準コーディネーターとして運航支援に携わる。
【リフレッシュ方法】
高校まではサッカー、大学ではフットサルをしていました。社会人になってから運動する機会が激減したため、平日の仕事終わりや週末の時間を利用して週3~4回程度ジムに通っています。さらに、先輩同僚にならってロードバイクを始めました。目標は、就航地で開催されるサイクリングイベントを制覇することです。
【座右の銘】
「迷ったら大変そうな道へ」
人生の分岐点でどの道に進むか迷ったときは、大変そうな道を選ぶようにしています。学生時代、部活動に励む中で見つけた言葉ですが、就職活動時にも支えになりました。初見で大変そうだと感じた道には、自分が成長できるチャンスが多くあると思っています。