“グローバル人材の育成”を建学の精神とし、通訳をはじめとする様々な分野で国際化に対応できる人材を50年にわたり送り出してきた日本外国語専門学校。
今回ご登場いただくのは、国際エアライン科の学科主任である山本ゆう子先生。
客室乗務員をはじめとする自身の社会経験を活かし、学生一人ひとりに寄り添いながら未来の客室乗務員・グランドスタッフたちを夢の舞台へと導いている。
photographs by Fukazawa Akira
月刊エアライン2020年10月号(8月28日発売)より転載
山本先生の担当する国際エアライン科はキャビンアテンダントとグランドスタッフの2つの専攻からなる。2019年度も国内大手エアラインをはじめ、200名以上が航空業界への就職を実現している
Q:仕事内容で1日のスケジュールを教えてください
私がメインで担当しているのは、Job Interview Practiceといって、面接対応の授業です。この授業は国際エアライン科の学生全員が1年次に履修します。航空会社に限らず、面接とは「あなたはどんな人ですか」ということを深く掘り下げられる場ですので、学生一人ひとりの良い所を1年かけて引き出していきます。まずは身だしなみや立ち居振る舞いといった外見をきちっと整え、その後、なにを頑張ってきたのか、どんなことを軸にして生きてきたのかなどの自分探しをして、面接官の前でしっかりと自分をアピールできるように段階を経て学んでいきます。
授業は1日平均3コマほどを担当しています。担任業務としては、キャリアガイダンスの一環として小テストや面談を実施しています。授業は9時20分から17時までですが、放課後も学生の希望に応じて様々なことを一対一で相談できる環境を整えています。就職のこと、勉強のこと、自身や家庭のことなど、学生によって抱える悩みは様々ですが、個々の目標をサポートするために授業外でも学生と直に話す時間を大切にしています。
Q:この仕事を志したきっかけはなんですか?
もともとは教師になりたいと思っていました。教育実習で高校生を担当した時に、「勉強は教えられる。でも、今の私は生徒たちの人生に深く関わっていくことができるのかな」という疑念がわき、社会経験を積んでからの方がきちんと教師になれるのではないかと思ったんです。
ちょうどそんな折、ANAの客室乗務員として活躍していた先輩が母校の説明会に来てくれました。ANAがこれからどんどん大きくなろうとしている時で、先輩のイキイキとした姿も魅力的でした。当時、女性が活躍できる職場は多くありませんでしたから、こういった職場でなら自分のキャリアを築けるのではないかと飛び込みました。その後、客室乗務員の経験を活かしながら様々な仕事や縁に恵まれ、こうして教壇に立って学生と向き合う仕事ができています。
子育てが一段落した後にはフルタイムで働きたいと考え、時間を工夫しながら子育ての合間にも仕事を続けてきた山本先生。社会とつながっていたいという思いがあったという
Q:日頃どういったことを心がけて業務に取り組んでいますか?
まずは学生の話をしっかりと聞きます。その上で、その学生が2年間きちんと学業を修め、就職活動をして卒業し、社会に出ていくという道筋を立てて話すようにしています。学校を卒業した後、彼女たちが自分の力で歩んでいくためにはどうすればいいのかということを常に意識していますね。
在校する2年間を通じて、他では学べないことをたくさん吸収してほしい、勉強だけではなく私たち大人がかける言葉の意味も考えながら生きていってほしいという思いで教壇に立ち、言葉を発しています。
Q:今後の目標を教えてください
毎年一人でも多くの客室乗務員とグランドスタッフの合格者を増やしていくことが私たちの一番の使命だと思います。教え子が夢を叶えた瞬間は、自分が内定した時よりもはるかに嬉しいものです。普段の勉強をはじめ、夜遅くまでの面接特訓など、ずっと一緒にやって来て努力の過程を見ていますので、その努力が実ると本当に嬉しくて涙してしまうくらいです。とてもやりがいを感じます。
国際エアライン科の他の教員とも協力して、これからも学生一人ひとりと話をする時間を大切に、彼女たちの夢の実現をサポートしていきたいと思います。
Q:航空業界を目指す学生さんへ
まず、勉強やスポーツなど、一度やろうと決めたこと、目の前にあることに対して誠実に努力してください。さらに、色々なものに興味を持ってほしいな思います。美術やスポーツなど、自分が夢中になれるものを見つけ、そこから多くの教養を身につけてください。
グランドスタッフや客室乗務員はビジネスマンに対応する機会が非常に多くなります。最初から対等にお話しすることは難しいでしょうが、あらゆるお客様と色々な角度からお話しができるような教養を身につけることも大切なんです。面接の最中に色々な経験を聞かれるというのも、面接官がそうした教養の素質も含めて見ているからだと思います。そのためにも、興味を持ったことには挑戦して色々な経験を積みながら、自身の引き出しをどんどん増やしていってほしいと思います。
☆Pick Up 山本さんが大切にしている航空グッズ☆
教え子たちの合格祈願にも活躍するグッズたち。CA時代に鞄につけていたタグ、航空安全の「飛雲観音」が有名な京都「天龍寺」のお守り、そしてANAのCAになった卒業生が誕生日プレゼントとして贈ってくれた機内販売のフェイラーのハンカチ。
編集後記
客室乗務員(CA)とグランドスタッフ(GS)のどちらを目指そうか悩んでいる学生がいたら、どうアドバイスしていますか?という問いに「とことん話を聞きます」と答えた山本先生。安全にオンタイムで飛行機を送り出すGSと、お客様とより長い時間を過ごせるCA。その特性を伝えたうえで、「あなたはなにをしたいの?」と問いかけ、学生が自ら考え自発的に選択できる環境を整えることが大切だと語ってくれました。バックグラウンドの異なる様々な学生と向き合う時に、社会経験や子育ても大いに役立っているとのこと。教え子への愛がたくさん感じられるインタビューでした。
今回お話をうかがった方
学校法人 日本外国語専門学校
国際エアライン科
担当ディレクター 学科主任
山本 ゆう子さん
大学卒業後、ANAの客室乗務員として6年勤務。その後、子育ての傍かたわら、在宅ワークや接客術を活かした販売業務などを経験。以前に非常勤講師として3年間勤務経験のあった日本外国語専門学校に2008年、専任教員として入職。
【リフレッシュ方法】
汗をかいて心身ともにデトックスするため、ウォーキングやホットヨガを生活に取り入れています。また、一人で美術館を訪れ、絵を眺めて過ごす時間も息抜きになります。国立西洋美術館の常設展に飾られたモネの「睡蓮」がお気に入りです。
【座右の銘】
「努力に勝るものはない」
私自身、学生の頃から器用でなく、生き方にしても勉強にしても時間をかけてコツコツと取り組まないと結果がでないタイプでした。ですが、やってきたことは時間がかかったとしても必ず報われますし、小さな努力を積み重ねていくことが、ひとつの大きな成果につながるのだと思います。様々な経験を積んだ今もそう感じています。