グランドハンドリング
多様なグランドハンドリングの仕事
空を自由自在に飛ぶことのできる旅客機だが、到着してから次の便として出発するまでの空港滞在中は多くの地上スタッフによる支援が必要だ。地上支援業務は「グランドハンドリング」と総称され、作業の内容は多岐にわたる。
具体的には、到着機の誘導(マーシャリング)、乗客が旅客機を乗降する際に利用する旅客搭乗橋(パッセンジャー・ボーディング・ブリッジ=PBB)やタラップ車の脱着、ハイリフトローダー(貨物搭降載用の特殊車両)やベルトローダー(手荷物搭載用の特殊車両)を使った貨物・手荷物の搭降載、トーイングカーによって出発機をスポットから押し出すプッシュバック、旅客機を格納庫や他のスポットへ牽引するトーイング、機内で使用する水の補給、汚水の回収などだ。
一部の特殊車両の運転には大型免許や大型特殊免許、牽引免許の取得が必要なものもある。
また近年では、以前はライン整備士の役目だった機体の外部点検をグランドハンドリングスタッフが担うケースも増えている。万が一、機体に異常が発見された場合には、直ちに整備部門へ連絡し、改めて機体の点検や補修などが行われることになる。
国内線の場合、便間の折り返し時間(ターンアラウンドタイム)は30分~1時間程度。この間に旅客の乗降や貨物・手荷物の搭降載をすべて完了し、出発便を送り出さなければならないので作業はかなり忙しい。
通常、1便のグランドハンドリング作業は3~4名が一組のチームで行われ、他にパートナー会社のスタッフも加わる。ミスや無駄な動きのないよう工程管理者が指揮をするが、スムーズな作業を実現するにはチームワークが何より重要な要素となる。
他部門との連携も必要とされる
ターンアラウンド中にはグランドスタッフ(空港の旅客係員)や機内で次便への準備を進める客室乗務員、パイロットとの連携も欠かせない。
たとえば機内に持ち込めないほど大きな手荷物を持ってきてしまった乗客がいた場合、グランドスタッフはその手荷物を搭乗ゲートで預かってグランドハンドリングスタッフに託し、速やかに貨物室へ積み込む必要がある。
こうしたハプニングがあっても出発が遅れないのは、部門や職種の枠を越えた迅速で正確な情報の伝達による連係プレーが行われているからである。
グランドハンドリングスタッフの仕事は旅客機の定時運航を維持するうえで極めて重要だ。
一つの便が定刻にスポットを離れるたびに達成感を得られる、とグランドハンドリングスタッフの多くが口をそろえる。グランドハンドリングスタッフが整列して出発機を見送る光景は日本の航空会社らしい“おもてなし”として、近年では外国人旅行者の間でも評判になるほどだが、彼らは自らの達成感と旅行者が無事に旅を終えることへの祈りを胸に、今日も空港で手を振っているのである。